ChatGPTがリリースされたことをきっかけに、生成AIのビジネス活用が注目されています。現在様々な企業で生成AIのビジネスへの活用が検討されており、徐々に活用事例が増えてきました。しかし、生成AIを自社で活用を検討する中で、「建設業界である自社の場合は具体的にどのような生成AIの活用ができるのだろうか?」とお悩みの方は多いのではないでしょうか?本記事では、建設業界に特化して、生成AIをビジネス活用するメリットや活用事例を紹介していきます。ぜひ今後の生成AI活用のビジネス活用のヒントにしてください。
この記事でわかること
- ChatGPT・生成AIの建設業界でのビジネス活用の事例
- ChatGPT・生成AIのビジネス活用の手順とポイント
こんな人におすすめ!!
- ChatGPT・生成AIをビジネスで活用したいけど、自社業界での活用方法がイメージがつきづらい 経営者/管理職/AI・DX推進担当者
- ChatGPT・生成AIをビジネスで活用のために、まずは同業界での活用のされ方をリサーチしたい 経営者/管理職/AI・DX推進担当者
- ChatGPT・生成AIをビジネスで活用するにあたって、活用手順とポイントをインプットしたい 経営者/管理職/AI・DX推進担当者
1.生成AIとは?
生成AIとは、コンピューターが人間のように様々なオリジナルコンテンツを自動で生成する革新的な技術のことです。
生成AIは、主に4つの分野で活躍しています。
皆さんが耳にしたことのあるChatGPTはテキスト生成AIの代表的なツールの1つです。
他のテキスト生成AIツールには、Google社のGeminiやAnthropic社のClaudeが性能が高いと有名なツールがあります。
つまり「ChatGPTと生成AIは違う」というより、「ChatGPTはテキスト生成AIの1つ」と考えるといいでしょう。
そして、このChatGPTをはじめとした、生成AIの高度なコンテンツ生成が、ビジネスにおいて大きく貢献することが期待されており、多くの企業がChatGPT・生成AIのビジネス活用へ関心が強まっています。
2.建設業界における生成AIの活用ポイントとメリット
建築業界において、ChatGPTや生成AIのビジネス活用は多くのメリットをもたらします。以下は、たくさんある中の代表的な活用ポイントとメリットの例です。
1.日々の文書作成業務効率化
ChatGPTなどのテキスト生成AIによって、日報や報告書、議事録などの定型的な文書作成を自動化できます。社内専用AIを構築することで情報漏洩のリスクを抑えつつ、自然な文章で作成できるため、担当者は内容確認と修正に集中でき、大幅な時間短縮につながります。
2.3Dモデルの生成効率化
生成AIを活用すると、テキストや簡単なスケッチから3Dモデルを生成することができます。設計の初期段階で、アイデアを素早く形にするのに役立ちます。また、既存の2D図面から3Dモデルへの変換も自動化できます。画像・動画制作にも活用することで、より分かりやすいビジュアルコミュニケーションが可能になります。
3.社内ナレッジを活かした設計書作成の効率化
過去の設計データや社内規範を学習させた生成AIは、設計書作成を支援できます。例えば、条件を入力すると、過去の類似設計を参考に適切な部材や工法を提案したり、設計書の一部を自動生成したりすることが可能です。ChatGPTと画像生成AIを組み合わせることで、顧客の要望をより的確に把握し、設計に反映することも期待できます。
3.建設業界の生成AI活用事例5選
ここからは、建設業界でのChatGPT・生成AIのビジネス活用事例を紹介していきます。ぜひ自社での活用のヒントにしてください。
1鹿島建設:社内専用AIを使って情報漏洩のリスクなく業務をサポート
鹿島建設は、グループ従業員約2万人を対象に、自社専用の対話型AI「Kajima ChatAI」の運用を開始しました。このAIは、日本マイクロソフトのAzure OpenAI Serviceを活用し、ChatGPTと同等のAIモデルを社内専用に構築したものです。これにより、従業員が入力した情報が外部に流出するリスクを排除し、安全な環境でAIを活用できるようになりました。従来、鹿島建設では情報漏洩のリスクを懸念し、ChatGPTの業務利用を禁止していましたが、業務の効率化や生産性向上を図るため、独自の安全なAI環境の構築を進めてきました。「Kajima ChatAI」は、イントラネット内での利用を前提としており、従業員の認証や利用履歴の記録など、独自のセキュリティ機能が強化されています。
参考:グループ従業員2万人を対象に専用対話型AI「Kajima ChatAI」の運用を開始
2.大林組:建物の外観デザインを自動生成し、3Dモデルを作成
大林組は、建築設計の効率化を目的に、生成AIを活用した設計支援ツール「AiCorb」を開発し、2023年7月から社内での運用を開始しました。このツールは、手描きのスケッチやテキストによる指示をもとに、建物の外観デザインを短時間で自動生成し、そのデザインを基に3Dモデルを作成する機能を備えています。これにより、設計初期段階でのデザイン案作成が大幅に効率化され、発注者との合意形成がよりスムーズに進むことが期待されています。また、デザインの直感的な提案が可能となり、設計プロセス全体の生産性向上にも寄与することが目指されています。
参考:大林組のAIツールはビル外観を生成して3次元化もこなす、7月に社内運用開始 | 日経クロステック(xTECH)
3.前田建設:建設プロセスの効率化とビジュアルコミュニケーションの向上へ
前田建設は、生成AIを活用した画像・動画制作分野で、株式会社タジクと共創を進めています。この取り組みでは、生成AIを活用した教育メニューを導入し、建設業界におけるビジュアルコミュニケーションの向上を目指しています。また、建設やインフラサービスの分野での生成AIの可能性を探り、効率性や有効性の向上を図るための新たな価値創出を目指しています。さらに、中京テレビとの共創契約も視野に入れ、生成AI技術の発展に寄与する取り組みを進めています。
参考:光邦と前田建設ICI未来共創センターが生成AI「画像・動画」分野でタジクと共創 中京テレビとも共創の検討を開始
4.株式会社mign:建築プランナーのインタビューとパース(建築物のイメージ画像)作成の自動化
株式会社mignは、2023年7月に建築プランナーのインタビューとパース作成を自動化する生成AIソリューションを公開しました。このソリューションは、ChatGPTと画像生成AIを組み合わせ、ユーザーが希望する住宅の情報を入力すると、建築プランナーのように質問を行い、その回答に基づいて即座にイメージ画像を生成します。これにより、設計者のコスト削減と作業効率の向上が期待されています。公開されたβ版は、日本語入力にも対応しており、2023年8月末まで利用可能です。
参考:生成AIによって建築プランナーのインタビューとパース作成を自動化したソリューションを公開(期間限定) | 株式会社mignのプレスリリース
5.大成建設:最適な建築設計案を短時間で自動生成
大成建設が開発した「AI設計部長」は、AIを活用して建築の概略設計案を自動生成し、顧客の希望条件に合致する最適な設計案を短時間で提供できるようになりました。このシステムは、建築基準や法規制を考慮した建築可能範囲を自動で算出し、複数の建築パターンを比較検討することで、敷地のポテンシャルを最大限に生かした設計案を選び出すことができます。また、選定した設計案をBIMデータ(Revitデータ)として出力できるため、詳細設計への移行が迅速かつ効率的に行えるようになり、設計業務全体の効率化と高度化が実現されました。これにより、従来は多大な時間と労力を要していた設計案の絞り込みや比較検討が、より容易かつ効果的に行えるようになったのです。
参考:「AI設計部長」に概略設計案の自動生成とRevit出力の新機能、大成建設:ジェネレーティブデザイン – BUILT
4.ChatGPT(生成AI)のビジネス活用における5ステップの解説
このセクションでは、生成AIのビジネス活用における4つの手順について解説していきます。これから生成AIの社内導入を検討している経営者/管理職/推進担当の皆様問わず、プロジェクトを進めていくイメージをつけたい方向けのセクションです。ここでは、代表的なChatGPTの活用ステップをご紹介。
まずやるべきことは、業務の棚卸しを行い、現状Asisの業務フローを整理することが大事です。
そして、各項目でどの業務にどれくらいかかってしまっているのかの整理してコストを把握をします。
せっかく予算も期間もかけて開発したのに、全く使えないという状況が起きないようにしましょう。
現状の業務の棚卸をして、各業務にどれくらいコストがかかっているのかを把握したら、解決するべき課題特定しましょう。
課題は、実際にその課題が解決されたらどれくらいのコスト削減が望めるのかなどのビジネスインパクトをできる限り算出することが大切です。
STEP1とSTEP2で整理した内容を基に、課題を解決して、「今までの業務がどのようになっているのが理想なのか」を整理します。
【例】
Asis(今までの業務):議事録を新入社員がドキュメントで自力でタイピングして作成
Tobe方針(どのようになっていれば理想なのか):議事録を自動で作成
最初は、例くらいの粒度感でも問題ないです。
この整理を基に、後続のSTEP4のソリューション立案で「議事録を自動で作成」する方法を具体化していく形になります。
ここでは、STEP3で整理したTobe方針実現のためのChatGPTを活用したソリューションを検討します。
ChatGPTを活用したソリューションのアプローチは3パターンあります。
①ChatGPTのプロンプトを効率化したい業務に調整する方法
②ChatGPTを特定の業務のために応答をカスタマイズさせるGPTsを活用する方法
③ChatGPTのAPIを利用したシステム開発をして活用する方法(3の”IT業界の生成AI活用事例7選”でご紹介した事例はここに当てはまる)
それぞれのメリットデメリットを整理します。
比較項目 | A.ChatGPT・生成AIツールを利用 | B.生成AI活用システムを開発 |
---|---|---|
概要 | ①ChatGPTのプロンプトを効率化したい業務に調整する方法 ②ChatGPTを特定の業務のために応答をカスタマイズさせるGPTsを活用する方法 | ③ChatGPTのAPIを利用したシステム開発をして活用する方法 |
メリット | 特に開発が必要ないので、比較的導入がスムーズ | 自社の必要要件に沿って自由にカスタマイズが可能 |
デメリット | ・誤った使用で情報流出の可能性 ・ChatGPTが提供している範囲内の機能のみでカスタマイズ | ・開発工数や費用の観点でコストが高くなってしまう |
ChatGPT・生成AIのビジネス活用は企業によって正解が違います。そのため、開発・リリースしてそのままで終わりではなく、継続的な検証改善をしていく必要があります。
定量的な面では、STEP2で試算したビジネスインパクトがもたらされているのかを検証します。
また、定性的な面ではUIUX(使い勝手)におけるフィードバックを通して改善できる部分あるのかを洗い出します。
継続的な検証改善によって、よりビジネスインパクトの大きいChatGPT・生成AI活用が望めます。
注意点
- 今回紹介したステップは一般的な流れではありますが、自社の状況や打ち手によっては臨機応変にステップを変更しながらプロジェクトを進行していく必要があります。
5.生成AIのビジネス活用で失敗しないのための5つのポイント
ChatGPT・生成AIのビジネス活用においては、ただChatGPTや生成AIシステムを導入するだけではなく、以下のポイントに気を付ける必要があります。
1.自社の活用可能性のある業務内容の整理とビジネスインパクトを試算する
生成AIの活用は確かにビジネスに大きなインパクトをもたらします。しかし、他社にとって生成AIによるチャットボット実装がビジネスインパクトが大きくても、自社にとって生成AIによるチャットボットの実装が同じ結果をもたらすとは限りません。きちんと自社にはどのような業務が存在しており、どんな解決が生成AIで対応できそうか?そしてそれがどれくらいの業務効率化をもたらすのか?どのくらいのコストカットをもたらすのか?ということをきちんと活用前に整理する必要があります。
2.ガイドラインの設定によるリスク管理
生成AIはビジネスインパクトが大きい反面、使い方によっては著作権侵害・情報漏洩などのリスクが潜んでいます。社内できちんと生成AI利用ガイドラインを明文化/浸透させることで、リスク管理を徹底していくことは非常に重要です。
3.継続的なPDCA
生成AIのビジネス活用は近年注目されているため多くの企業が活用に向けて取り組んできました。
しかし、まだ多くの企業がテスト段階であり、最適解を模索している最中であると考えられます。また、業界や業種によってその最適解は変わってきますので、他の企業の真似をしたからといって、その活用方法が自社にとって良いとも限りません。
ですので、継続的なPDCAを回していくことによって、自社にとっての最適解を見つけていく必要があります。
4.AIリテラシーの向上
生成AIのビジネス活用で重要な前提があります。それは使い手のAIリテラシーの向上です。例えば、ChatGPTはプロンプトを入力して、テキストが生成されますが、同じような成果を期待しても、プロンプト次第でChatGPTのテキスト生成の質は異なります。ですから、常に使い手のAIリテラシーの向上が生成AIのビジネス活用の可能性を最大限引き上げる鍵になります。ですので、生成AIを導入したから完璧!という訳ではなく、社内でのAIリテラシーの向上に向けた研修やナレッジ共有は継続して必要になります。
5.社内での生成AI活用の文化とマインドの浸透
生成AIのビジネス活用で意外に見落とされているのが、この「生成AIを活用の文化浸透」というマインドです。特に、社員各々に生成AIツールを業務活用する導入の仕方をしたとしても、使う文化がないと社員の生成AI活用に関するリテラシーも効果も向上しません。最初は誰でも慣れていないツールを触ることに抵抗がありますが、ここは経営者・管理職・推進チームのメンバーが積極的にことあるごとに生成AIツールの活用を推奨していくアクションを取る必要があります。
6.まとめ
今回は建設業界における生成AIのビジネス活用事例や実際に生成AIを活用する際の手順やポイントを紹介してきました。
これから更なる技術の発展によって、ビジネスシーンにおける生成AIの活用は今後も加速してくることでしょう。
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